自然治癒力
自然治癒力について
医学の源流とされる古代ギリシャのヒポクラテスは、からだ自体に不調を治す働きがある、と指摘しています。
また「病気」というのは失われたバランスを身体が取り戻そうとしている状態なのだ、と述べ、そして、この働きの有無が生きているものと生きていないものを区別するのだ、とも述べています。
これをふまえヒポクラテスは「自然こそが最良の医者である」という方法論を提示しました。
つまり、医者の主たる役割というのは身体が持つ自然に治癒しようとする性質を助けることなのであり、医者は身体の働きをよく観察し、治癒的な性質の妨げになっているものを取り除くことによって、結果として身体はそれ自体で健康を取り戻す、と述べました。
自然治癒力とは
現代西洋医学では、診断により病名をつけ、医薬品の処方や手術を行います。
さらに、原因となっている部分の除去や、症状の緩和(対症療法)が目的となっています。
ただし、実は、こういったことだけでは病気は治りません。
結局は、生命力を高めて治癒力が動くようにしてやることで治癒しているのです。
自然治癒力には4つの機能があります。
1.恒常性維持機能(ホメオスタシス)
2.自己防衛機能(免疫)
3.自己再生機能(創傷治癒)
4.解毒、排泄機能(デトックス)
4つの機能は、独立した別個のものではありません。
互いに連携して、機能をします。
また、ひとつの現象を別の側面でとらえた表現とも言えます。
なお、自然治癒力に関しては、さまざまなとらえ方、考え方があります。
すべての生物には生体恒常性維持機能(=ホメオスタシス)が備わっており、その発動が自然治癒力であるというとらえ方もあります。
なので、ここで述べるのは、あくまでもひとつの考え方に過ぎないことを最初にお断りしておきます。
恒常性維持機能(ホメオスタシス)
恒常性維持機能(=ホメオスタシス)とは、外界の環境の変化に対して、生体を安定した恒常的状態に保とうとする仕組みです。
哺乳類の場合、神経系・免疫系・内分泌(ホルモン)系の相互作用によって、恒常性維持が実現されています。
たとえば、体温、血圧や血糖値は一定の範囲内に保たれ、気道の粘膜は一定の粘度の粘液で潤い、胃の中は胃酸により一定のPHに保たれています。
そして、これらが破綻した状態が、病気と呼ばれる状態です。
自己防衛機能(免疫)
自己防衛機能(免疫)とは、生体内に侵入した病原体などの非自己物質や、がん細胞などの異常な細胞を認識して殺滅することにより、生体を危機から保護する仕組みです。
精密かつダイナミックな情報伝達を用いて、細胞、組織、器官が複雑に連係しています。
仕組みが機能する上では、ウイルスから寄生虫まで広い範囲の病原体を感知し、作用が正しく行われるために、生体自身の健常細胞や組織と区別されなければなりません。
自己再生機能(創傷治癒)
自己再生機能(創傷治癒)は傷ついたり古くなった細胞を修復したり、新しい細胞に交換する仕組みのことです。
創傷治癒が、その代表的なものです。
この機能は、人間が生を受けた時にすでに遺伝子によって受け継がれているもので、細胞に記憶されているものです。
その遺伝子の記憶に従って、壊れた細胞は再生されます。
解毒、排泄機能(デトックス)
解毒、排泄機能(デトックス)は体内に侵入してきた毒素を無毒化し、老廃物などといっしょに排泄する機能のことです。
主に、水分を利用して排泄させようとします。
経路として、尿、便、汗、涙、鼻水があり、緊急の場合は下痢、嘔吐という形で排泄されます。
それでも排出されない場合は、皮膚から排泄しようとします。
代表的な症状が、アトピー性皮膚炎、ニキビ、膿疱があります。
自然治癒力を高めるために
自然治癒力は、誰もが持っています。
重力と同じであり、生きている限り、常に作用しています。
うまく働かせるにはどうしたらよいのでしょうか。
1.休養
忙しい現代社会において、最も不足しているのは休養です。
まじめな方ほど、常に忙しくしていないと逆に不安になったりします。
休養は怠けているのとは違います。
せっかく休養をとっても頭の中は、忙しく他のことを考えていたりしたら、休養になりません。
心と体を休めましょう。
自然治癒力の発動はゆっくりです。
慌てたり、急いだりしてはダメです。
また休養と言っても、ただ休息するだけでなく、病気の回復とともに、適度に肉体を動かし、血行を促進し、酸素や栄養素を全身の細胞に送ってやる必要があります。
2.栄養
現代の食事は糖質過多のビタミン、ミネラル不足と言えるでしょう。
精製された米、小麦、砂糖、それらを利用した加工食品、清涼飲料水などが溢れています。精製されたものは、糖質が多く、ビタミン、ミネラルが含まれる部分は削ぎ落とされるので、そうなるのは当然です。
野菜や果物に関しても、甘くなるように品種改良し、促成栽培するためビタミン、ミネラル分は少なくなります。
また人体は、ストレスが多いとビタミンを大量に消費します。
ゆっくり休養しつつ、精製されていない食品や自然に近い肉や魚、野菜や果物を摂りましょう。
3.自律神経を整える
自律神経とは、私たちの生命活動の根幹を支える、非常に重要な役割を担う神経システムです。
血管、リンパ腺、内臓など、自分の意思とは無関係に働く組織に分布しており、呼吸や代謝、消化、循環、ホルモン分泌、免疫など、自分の意思とは無関係に、生命を維持したり、調節を行うために、24時間365日休むことなく活動をしています。
このバランスが崩れていると、自然治癒力は充分に発動されません。
自律神経を整えましょう。