より深く自律神経
より深く自律神経
自律神経を説明する場合、
自律神経とは、生命を維持するため内臓などの機能を、意識せずに活動させる神経のことです。
心臓を動かしたり、消化したり、汗をかいたり、意識しませんよね。
これらを自動的に行なうから、「自律」神経と呼ばれます。
自律神経は2種類に分かれており、ひとつは交感神経、もうひとつは副交感神経です。
交感神経は、体を興奮させ、内臓の働きを抑制し、「闘争と逃走」の状態にします。
副交感神経は、体をリラックスさせ、内臓を活発にし、「回復と改善」を行ないます。
この二つの神経が、バランスよく働くことによって、私たちは健康的に活動しているのです。
というのが一般的ですが、
これに対して、副交感神経的な働きをする2種類の迷走神経と交感神経による3段階の自律神経のしくみの方が、実際の症状などをよりよく説明できるという説があります。
それが、ポリヴェイガル理論(多重迷走神経説)です。
ポリヴェイガル理論(多重迷走神経説)
イリノイ大学、脳-身体センターのスティーブン・ポルゲス教授の唱える理論です。
近年アメリカでは、とても注目されており、有力な説として認められています。
自律神経の交感神経、副交感神経のうち、副交感神経の9割は、迷走神経で、構成されており、迷走神経は、内臓などを司っています。
この迷走神経は、腹側迷走神経と背側迷走神経に分かれており、交感神経を含めた、この3つの神経回路によって、外部環境に適応している、という理論です。
複数の迷走神経が関与するということで、ポリヴェイガル理論(多重迷走神経説)と呼ばれます。
三段階の適応行動
人間は、外的環境(安全、危険、生命の危険)に応じて、3つの神経回路(腹側迷走神経、交感神経、背側迷走神経)を使い分けていると考えられます。
人間は安全な環境にいると、腹側迷走神経が優位になります。
腹側迷走神経は、顔の表情、発声、傾聴などコミュニケーションに関わる部位をコントロールしています。
心拍数、呼吸も適時制御しています。
社会性を発揮し、落ち着いた行動を取らせます。
この状態が、まず健康な状態と言えるでしょう。
次に、危険な状態になると、交感神経が優位になります。
悲しみ、恐怖、怒り、興奮といったの感情となり、筋肉は緊張し、心拍数、血圧、血糖は上昇、呼吸は速くなり、闘争か逃走かという行動を取ります。
この状態が長く続くと、その緊張によりさまざまな症状が出ると考えられます。
さらに、命に関わる危険な状態になると、背側迷走神経が優位になります。
活動停止、死んだふり状態になり、感情はなくなり、筋肉は弛緩、心拍数、血圧は低下、呼吸は浅くなります。
この状態が続くと非常に重い症状を引き起こすと考えられます。
ポリヴェイガル理論から症状を考える
うつ、ひきこもり、五月病、無気力、不定愁訴、起立性調節障害、朝起きれない、不安障害、自閉症、統合失調症、低血圧などは、背側迷走神経が反応してしまっている状態(不動、死んだふり)であると考えられます。
動悸、過呼吸、パニック障害、不眠、高血圧、高血糖、筋肉のコリ、歯軋り、心臓病などは、交感神経の優位が長引いている状態(闘争-逃走)と考えられます。
これらは無意識の神経反応なので、自覚しにくいと思われます。
ポリヴェイガル理論を理解して、神経反応をできるだけコントロールしましょう。
腹側迷走神経が優位になるように、安心安全な環境をつくり、顔の表情や声、耳などによる、コミュニケーションを活発にしましょう。